栄養化学分野 タイトル Last update
2022.9.20
栄養化学分野の理念
食行動の制御メカニズムを、生物学的なアプローチにより解明し、健康的な食生活を可能にする。

 2015年の報告では、世界疾病負荷(疾病が社会に与える影響)のトップ10のうち、4つ(第1,3,4,7位)が肥満関連疾患(高血圧、糖尿病、肥満、高脂血症)です。健康寿命を延ばすには、肥満関連疾患(生活習慣病)を減らす必要があります。
 ヒトは、体に良い食べ物が目の前に提供されても、その食事を「食べたい」と思い、「食べる」とは限りません。食事療法では、適正な食事(栄養学)とその準備方法(食品科学)を患者さんに伝えても、守ってもらえない(行動に至らない)ことが大きな課題になっています。
     食から健康への道筋
 食から健康に至るには、栄養学や食品科学に加え、食行動科学が重要です。まず、あまりよくわかっていない 食行動を制御するメカニズム(「食べたい」とその決断のしくみ) の全容を解明することが重要です。そして、そのメカニズムが 病態においてどのように変容しているのか を理解し、介入方法を模索する 必要があります。

 
栄養化学分野のヴィジョン①:研究
「食べたいもの」を決めるしくみを解明する

 食べたいものは、TPOに応じて変わります。体調、過去の経験、目の前の状況(誰がいるか、どんな選択肢があるか)の影響を受けます。しかし、「何を食べるか(食選択・食の意思決定)」を制御するメカニズム は、あまりよくわかっていません
 食行動の制御には、「入力感知、評価・統合、経験学習」の3つのステップが関与することはわかっています。味嗅覚など意識できる感覚の化学受容に基づく入力感知に関しては、かなり研究が進んできました。しかし、意識にのぼらない入力や、各種の入力が脳内で評価・統合されるメカニズム は、未解明です。そして、意思決定に基づきとった行動の結果が、次の判断の修正に活用されるメカニズム(食にまつわる経験学習)についても、全容が解明されているとは言えません。
 そこで、当研究室ではこれらのしくみの解明に取り組みます。詳細については「研究内容」のページをご覧ください。

 
栄養化学分野のヴィジョン②:育成
研究を通して、次世代のパイオニア人材を養成する

研究室のモットー:「できない」を「できる」に変える。
          このモットーを実践するための十訓

 食行動の制御メカニズムの全容を解明するには、より多くの人々の協力が必要です。理念とノウハウを広め人材を増やし、多くの人を巻き込み、社会にインパクトを与える成果につなげたいと思います。

「知識とは、たいまつの火のようなもの」
 by トーマス・ジェファーソン:米国第3代大統領・Virginia大学(留学先)創設者
「一人で見る夢は、それは夢に過ぎない。しかし、みんなで見る夢は、現実となる」
 by エドゥアルド・ガレアーノ:ウルグアイ人のジャーナリスト

 そこで、 各方面を開拓していくパイオニア人材 が育つ環境作りを研究室として目指します。その一環として、「未解決の課題を解決する面白さと、そのために必要な能力」 を、研究活動を通して伝えます
・課題解決の面白さ
 好奇心の追求:ドキドキ(不安)ワクワク(ポジティブ感情)に変える楽しさ        わからない/できない  わかった!/できる!

・課題解決に必要な5つのスキル:
 分析力:論理的な分析能力
 創造力:既存の答えがない状況で、アイデアを出す発想力
 行動力:アイデアを実践し、やり抜く力
 コミュニケーション能力:自分の考えを伝え、他人から協力を得る能力
 リーダーシップ:自他の行動のベクトルを合わせ、目標を達成する能力
 パイオニア人材
 世界で初めて課題を解決(=研究)するには、「自分のやりたいこと(情熱を注げること)」を「世のため、人のため」になる切り口で取り組み、かつ「どうしたら成功するか」を徹底的に考えて、やり抜くことが重要です。研究室での生活を通して、好奇心の追求(自分の基準)と社会からの評価(他者の基準)を両立させるコツを体得し、どんな分野でも生き残っていけるパイオニア人材へと成長してもらうことを目指します。

栄養化学分野 教授 佐々木努


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